2025年の11月分の日記です

11月1日(土)
夢野先生の字をしばらく見ていなかったから、
久しぶりに、フカのいる海に沈むことにしたの。
私はこれからもこうして、定期的に溺れ死ぬのね。
酷いわ。ほんとうに、酷い。


11月2日(日)
女のキリストはいやらしいけれど、女のマリアは純潔なのよ。
信仰があるわけではないけれど、都合良く縋る私は愚かです。
どうかご慈悲を。


11月3日(月)
糖尿病患者が使った大量の針の廃棄物を見たの。
毎日溜まってゆく針の一本一本を
あの人はどんな思いで捨てていったのか私にはわからない。
いつも素っ気ない態度をとってしまうことを
少しだけ後悔した日でもあった。


11月4日(火)
戦果 1-1-1-2
門前3 ロン5 放銃1
cpuも役満を打ってくる時代。
人工知能たちは既に自我を持って行動している。
監視カメラたちが、レーザーを出して、
私の頭を撃ち抜く日は、もうすぐ。


11月5日(水)
眠る時、細胞が沈むのがわかる。
宝石でもないのにチラチラ鬱陶しい
ああ憎らしい。もう気持ちよくって最高
さようなら。アナスタシヤ内親王陛下


11月6日(木)
学校の3階が停電。
今日は休校。
土砂降りの雨の中帰ったの。
同じ電車で女子高生を見た。
シャツが透けてた。水色。
大人の男たちがチラチラとその子を見ていたの。
私の父親と同じような年なのよ
自分の娘と同年代の女子に
あんな視線を向けるなんてあり得る?
気持ち悪い百足どもめ。


11月7日(金)
頭のいい学校の女子高生たち。
珈琲店で進路のお話をしていたのを盗み聞きしたの
「先月の模試、東京大学はC判定だったの。行けなくはないけど、慶應の方が洒落ているから好きだわ。」
ところで、どうして、セーラー服を着崩すの。
どうして、三角タイをつけていないの。
セーラー服を着崩すくらいなら、私は賢くなくていいわ。


11月8日(土)
社会風潮に配慮しすぎている映画は面白くないわ。
芸術くらいは尖ってもいいと思うの。

11月9日(日)
お母様が、乙女の本棚の『死後の恋』の表紙を見て、
「あら綺麗な本ね」ですって。
お母様、あなたが手にしているのは、
王家の血を引く最後の内親王の子宮に、
宝石を詰めた銃弾を撃ち込む話なのよ。
お母様、前に教育に悪いからなんて理由で、
『危ない1号』を没収しましたけど、
本当に危ないのは毒と認識させないものだと思うの。
なんだか素敵ね。


11月10日(月)
夢野先生の文字は、甘い果実と海の香り
いつの間にか、暖かな島に私一人
波は砂浜に押し寄せてるはずなのに、音が聞こえないのはなぜ。
私の文字は、体言止めが多くて、
気持ちをポツポツ落としていくだけの、雨。
お茶の水のお嬢さんみたい。
私はそんなに強かじゃないし
お手伝いもしないから、ちっとも使える娘ではないけれど。


11月11日(火)
彼のことが大嫌いで大好きなの。
私の持ってないものを全部持っておきながら、
私なんかに擦り寄ってくるなんて気持ち悪いじゃない。
だから意地悪するの。
彼が泣き出してしまって、
そして私も一緒になって泣き出して
その繰り返し。


11月12日(水)
神童と呼ばれるには老いすぎている。
天才と呼ばれるには足りなさすぎる。
自己陶酔癖の気狂い女は今日も眠る。
永遠に、眠る。


11月13日(木)
私の手首から花が咲いてしまう!!
動脈の血を吸って!
静脈に根を張って!
薄い皮膚を突き破って茎が伸びていく!!
花が!
花が咲いてしまう!!!


11月14日(金)
ぬまたばの 黒濡れし髪 八文字 
               涙吉原 沈め残月

暁の 身捨つるほどの 後光なり
             焦土見渡す 祖国はありや

日は沈み 灯火の如し 歌舞伎座は
             眩惑の小屋 天井桟敷
             

11月15日(土)
昨日は私の手首に花が生えてしまったから、
嫌でも植物が目の端に映る。
私の学校のお庭にね
追悼の木があるの。
そう、もう何十年も前に学校に通っていた生徒さんが
不慮の事故で亡くなった時に植えたらしいんだけども。
みんな、その木に向かって一礼をしなければいけないの。
まるで目の前に人がいるみたいに、挨拶しなきゃいけないのよ。
土にその子の血でも撒かれているのでしょうね。
でないと、示しがつかないくらい狂気。


11月16日(日)
受験が一通り落ち着きそうだから、
暇つぶしに恋愛でもしようかしら。


11月17日(月)
お天道様がみているというのなら、
月光はアリア様の後光だから、
私に、自由は、ない。


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