『自白』
もう時効だと思って聞いてほしい。
私はまだ小さい子供だったということを前提に聞いてほしい。

メダカを飼っていた。
名前はつけていなかったけど、確かに飼っていた。

水槽の水換えをしていた。
私は網でメダカを掬う。
1匹2匹
最後の1匹が逃げる。

私は夢中になって
夢中になって
追いかけて
メダカに網を押し付けた。

メダカの胴体は網の金具と水槽のガラスの間に挟まった。

嫌な感触
そっと網を離した。

メダカは、尻尾の近くの胴体の肉がぱっくりと切断されていた。
メダカの体をかろうじて繋ぎ止めていたのは背骨だった。
次の瞬間メダカは動いた。
私の一滴分にもみたないであろう血がふわっと広がって、多すぎる水の中に消えていった。

その時間があんまりにも長くて
メダカのお目目があんまりにも大きくて
あんまりにも口をパクパク動かすものだから
私はたまらなく...そうたまらなくなって
メダカを排水溝に流したの。


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